大潮の日にカメが産卵するという説 -その2-

 1年ほど前、「大潮の日にカメが産卵するという説」という記事を書きました。今回はより詳しい報告です。





◎【今回用いた基準となるもの】

① 新月から次の新月まで29~30日あると思いますが、ネット上の月齢カレンダーで、数年分の産卵期の大潮の数を数えてみたら、約30日の間に8日前後あるということが分かりました。それは27%程度。ひと月のうち約4分の1が大潮の日ってことになります。(前回の記事より引用)

② 潮見表カレンダー。より正確さを追求するために「熊本」での潮見表にこだわりました。一般的な月齢カレンダーは特定の基準となる場所があるようで、熊本はそれとはわずかにずれがあります。http://sio.mieyell.jp/select?po=84303 → このデータを用いたので、過去記事で導き出した数値と若干違いが生じています。





◎【考察1】 (5年間の)年別の大潮産卵率

数値は左から順に、総クラッチ数、大潮クラッチ数、大潮産卵率

〔2017年〕     29     7      24.1%

〔2016年〕     33      9      27.3%

〔2015年〕     35     11     31.4%

〔2014年〕     38      9     23.7%

〔2013年〕     29      5     17.2%

〔合 計〕     164    41     25.0%



2015年こそ31.4%となったものの5年間では25.0%です。大潮産卵率の低い2013年を除いて計算したとしても26.6%となります。大潮の日が27%ほどだとすると、カメは大潮の日に産卵するという説は当たらないように思います。


しかし、興味深い点もありました。




◎【考察2】 (5年間の)月別の大潮産卵率

数値は左から順に、総クラッチ数、大潮クラッチ数、大潮産卵率

〔4月〕      1     0         0% 
    
〔5月〕      36    13       36.1%

〔6月〕      75    13       17.3%

〔7月〕      41    13       31.7%

〔その他〕    11     2       18.2%

〔合 計〕   164    41        25.0%


 気温の低い5月は36.1%というやや突出した数値になりました。

 しかし、6月は圧倒的に産卵クラッチ数が多いにもかかわらず、大潮産卵は17%程度。当地での6月産卵は大潮と無関係というしかありません

 7月は一転高くなって31.7%ですが、27%との差はわずかと言えるかもしれません。それでも、高くなった原因は次の点と関係があるようです。実は飼育種別でもはじき出したんですが、我が家の場合、日本固有種ニホンイシガメが7月に産卵することが多く、大潮の日に産むのが他の種より目立って多かったのです。ニホンイシガメの分を計算から除くと、6月と同じ程度に落ち着きます。これは今後も観察が必要かもしれません。





◎【結論】 ※ 我が家の狭い飼育環境下での場合

大潮の日にカメが産卵するという説は、年間を通して見ると当てはまらない。

しかし、気温の低い繁殖期の初期には、大潮の日に産卵する確率が上がる傾向が見られる。とはいえ、その月でも全体の三分の二近くは大潮と関係なく産卵している。

ニホンイシガメは・・・?



 ここで興味深く思ったのが、Fabergeさんが前回の記事に寄せてくださった公開コメントです。

大潮と産卵の関係は温度に左右されると思います。

今年は特に暖かい日が多いせいか、この辺でも金魚、亀ともに潮に関係なく産卵しています。

金魚の話になってしまいますが、例年であれば 4月や5月は大潮中に産むことがほとんどですが 気温が上がるにつれ、潮に関係なく産みだします

亀に関しても、似たような感じを持っています。

なので、産卵のトリガー〔注釈;引き金、きっかけ〕としては温度が1番手で 優先順位も高く、次点に潮や気圧、湿度といった 部分が後押ししている感じですかね。

なので、大潮と産卵に関しては寒いところの 屋外飼育者は気にした方がいい程度との認識です。

※下線および注釈は筆者。


 今振り返って、このコメントは至言でした。似た傾向を私のデータも示していたからです。


 私も以前は大潮の日を待ち構えていた口です。しかし、最近はいつしか大潮の日に産むという説に疑問を持つようになっていました。経験上大潮の日によく産むわけではないことに気づいており、今回それを実際の産卵データが裏付けていました。低めの温度が大潮産卵に関係しているとすれば、年々気温が高くなっているように感じる昨今の気象状況だと、ますます大潮は産卵と関係なくなるような気がします。


 素人のこの計算や比較で正しいのかどうかわかりませんが、この記事が当blogを訪問してくださる方の参考になれば幸いです。あくまでも私の住む九州・熊本での産卵記録を基にした考察です。皆さんのお住まいの地域ではいかがでしょうか? 単なる経験や感情に基づく大潮肯定論ではなく、産卵データを基にした実際のご観察をお聞きしたいものです。

コメント

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No title

やっぱり、そんなもんですよね。

自然界では水温や気温の上昇には膨大なエネルギーが
必要なので、大潮の影響が大きいのかもしれませんが、

人工の狭い飼育場では温度や水温が上がりやすいんで
大潮よりも温度の方に引っ張られている気がします。
数時間の日照差で水温なんかはかなり変わりますし。

もともとの生息環境によっても多少変わるんでしょうが
うちでは冬眠可能な温帯域の亀しか扱っていないので
どれも似たような傾向です。

ちなみに、うちの今シーズンは4月後半~7月中旬まで
高温、空梅雨で進んだため、金魚も亀も潮に関係なく
産んでいました。

個人的には潮に沿って産んでくれた方が予想がついて
楽なんですけど、うまくいかないもんですね。

Re: Faberge さん、

適切なコメント、いつもありがとうございます。
金魚をやってる方からすれば、低温時の大潮産卵の話なんて気づいておられるんでしょうね。
幅広い知識と鋭い観察眼、感心いたしました。


確かに大潮ごとに産んでくれたら、予想できて楽ですよね。同感。


今回もまた示唆に富むコメントでした。
自然界と人工の飼育場の温度上昇の違い、私はそこまで考えていませんでしたね。
非常に興味深い視点でした。
自然界だとおっしゃる通り、より大潮に引っ張られているのかもしれませんね。
うちの結果は「飼育下の狭い環境」の中でと但し書きを入れとかなければいけませんね。